大手人材会社の調査によると、介護業界へ就職をしない業界非従事者の介護業界への就職をためらう大きな理由の一つで「体力的にきつそうだから」というものがあります。
〚参考〛リクルート/介護非従事者の意識調査資料
これは介護現場における身体的な事項が理由の労災事故や一般家庭における介護の過酷さなどがニュースでよく取り上げられていることが一因としてあげられます。
こういった「介護は体力的にきつそう」という業界外からのイメージを変えていかなくては、介護業界の就業人口増加にはつながりません。
また、実際に介護現場が体力的に厳しい職場であれば、介護業界から離職する人材が増えてしまい、離職した人材が「介護現場は本当に体力的に厳しかった」と周囲やメディアに発信することで、介護のイメージが悪くなり、ますます人が業界にこない・人が採用できないという負のループに陥ってしまいます。
ここでいう「体力的にきつそう」という内容には「腰痛」という要素が多分に含まれているといわれています。
この介護現場における腰痛を防ぐための考え方で福祉業界、介護業界の人事担当者に知ってもらいたい考え方が「ノーリフティングケア」という介助方法です。
ノールフィティングケアとは、「持ちあげない看護、抱えあげない介護」を目指し、介護をする側の腰痛軽減だけではなく、介護を受ける側の自立支援を考えた安全なケアという2つの考え方を同時にかなえる介助方法のことをいいます。
もともとはオーストラリアから生まれた介助方法ですが、オーストラリアではノーリフティングケアをオーストラリア前後に導入した結果、導入前後で看護・介護現場からの労災申請件数が約半分になったそうです。
日本でもこのノーリフティングケアという介助方法を広げようということで、日本ノーリフト協会という協会が日々この考え方の啓発につとめています。
同協会ではノーリフティングケアに関する資格をつくっているため、介護事業者が自社の従業員のスキルアップのために同協会の資格を活用するケースも多いようです。
最近では、自治体や業界団体でも積極的にこの介助方法の活用を推奨しています。
介護事業者でも求職者へのイメージアップと自社の従業員の身体を守るために「持ち上げない介護を目指す会社です」「会社としてノーリフティングケア宣言をします」「利用者にも従業員にも優しいケアを目指します」などのメッセージを社内外に発信するケースが増えてきました。
また、採用の現場でもこのノーリフティングケアという考え方の活用は有効に機能します。
採用メッセージとして使用するだけではなく、介護の仕事の説明会や体験イベント、ワークショップ、インターンシップなどの場でノーリフティングケアを求職者に体験してもらうというイベントを採用活動の中で実施できるためです。
介護の現場を経験したことがない学生や業界非従事者にとっては、実際に腰に負担がかからない介護の実務を体験することで「介護は想像していたよりもきつくない。自分でもできるかもしれない」と感じてもらうことが可能となります。
このノーリフティングケアという介助手法については、日常で生活する中でも知っておいて損ではない技術となるため、介護の現場に就職しなかったとしても役に立つ技術を知れたということで求職者に喜ばれるケースも多いようです。
採用だけでなく、ノーリフティングケアを導入してから離職者が減ったという介護事業者も増えてきているため、ノーリフティングケアは定着という側面でも有効な考え方といえそうです。
福祉業界、介護業界の人事担当者はぜひ一度ノーリフティングケアという考え方について人材の採用・定着の両面にどう活用できるかということについて検討をいただければと思います。
ノーリフティングケアという考え方は、福祉業界、介護業界のイメージを変える可能性を持った取り組みだといえるでしょう。
〚参考ページ〛その他の介護業界の周辺事業者、キーマンはこちら