保育士の退職理由については、待遇や仕事内容以外に「人間関係」が理由としてあげられることは業界内ではよく知られています。
本ページでは、福祉・保育業界の現場で職員同士の人間関係を大きく改善させた施設の事例を紹介させていただきます。
ある関東圏の福祉施設の施設長は、職場内の人間関係のことで悩んでいました。
その施設は20代~60代まで幅広い世代の方が働いており、職員同士の世代間のジェネレーションギャップもあり、職場内でのコミュニケーションがうまくいかず、職員同士の陰口が蔓延していたそうです。
職員同士の人間関係がうまくいっていないため、自然と施設のサービスレベルも下がり、サービスの利用者も減るという悪循環に陥ったそうです。
「福祉の仕事は一人ではできない、本来は職員同士でお互いに協力しあってサービスや施設が成り立っているはずだ」と考えた施設長は、その協力しあっていることをどう従業員同士に実感してもらうのがいいかと知恵を絞ったそうです。
そこで、施設長が考案したのが職員同士が協力しあっていることをお互いに伝えるツールの導入です。
具体的には、従業員同士で感謝の気持ちを伝えあうための名刺大で白紙の「ありがとうカード」を作成し、それをその日に出社している従業員全員が帰社する前に必ず誰かへの感謝の気持ちを書いて、タイムカードの裏に貼ってから帰るというルールをつくりました。
すると、直接言葉では伝えられなくても、ありがとうカードを通じて職員同士が感謝の気持ちを伝えあう文化が生まれ、やがて数か月後にはありがとうカードがなくても職員同士で自然と「ありがとう」と言いあえる職場環境に変わったそうです。
施設長も60代の職員が20代の職員へと書いた「ありがとうカード」を見た20代の職員が下駄箱付近で感動で泣いている姿を見て、この施策を実施して本当に良かったと実感したそうです。
職場の人間関係が改善されたこの施設はサービスレベルが上がり、地域での評判もよくなっていったそうです。
地域での評判がいいため、採用活動もうまくいくようになったとのこと。
上記の事例は職員同士で伝え合う「ありがとうカード」の導入でしたが、職員以外が起点の「ありがとうカード」に関する事例も紹介させていただきます。
ある関東圏の施設では、多忙な施設長が職員全員とうまくコミュニケーションが取れず、施設全体の雰囲気が悪かったそうです。
そこで、施設長は毎月一回、職員全員に給与明細を渡す機会を利用して、その時に職員全員に一人づつ必ず感謝の手紙である「ありがとうカード」を書いて渡すようにしたそうです。
感謝の手紙を書くためには職員の普段の行動をしっかり把握しておく必要があるため、自然と施設長は自ら職員との接点を増やすようになったそうです。
職員と施設長が普段からコミュニケーションを取れるようになったことにくわえて、職員への感謝の気持ちも伝えることで、施設長と職員の関係性も改善され、施設全体の雰囲気も良くなっていったそうです。
その結果、その施設は1年後には離職率が「ありがとうカード」導入前と比較して半分以下になったそうです。
「ありがとうカード」は単なる一つのツールにすぎませんが、ぜひ福祉・保育業界の人事担当者は職員同士、職員と役職者同士で普段から感謝の気持ちを伝えられるような職場の文化・風土づくりに取り組んでいただければと思います。
良い職場風土は、良いサービスを生み、結果的には採用活動にもかえってきますので、取り組む価値は十二分にあるといます。
まずは自施設の職員同士のコミュニケーションがうまくいっているか否かについて確認してみるといいでしょう。